美容室の設計において、設計段階から運営中を想像し、細部にわたり機能性かつ居心地の良い空間を作ることが不可欠です。施術エリアでは補助照明と主照明を絶妙に調和させ、クライアントの髪や肌の色味を正確に評価できる照度を実現。待合室では心地よい明かりとデザイン性の高い照明でくつろぎと視覚的な魅力を同時に提供します。作業の効率の最適化とともに、プライバシーを考慮し、個室感を確保する工夫をすることもあります。清潔感、快適性、デザインの一体感が美容室設計においてこれらの要素が見事に融合され、魅力的で落ち着く空間が誕生します。
照明の工夫
施術エリアでは、デザインに合わせた間接照明やデザイン照明を配置し、雰囲気作りをすることは大切ですが、最も重要なのは美容師がクライアントの髪を見やすくする【主照明】とクライアントがリラックスできるような温かみのある【補助照明】を《照度・色温度・その他器具の特性・店舗内の特徴》を考慮し、流行りのスタイルが提案できる照明で雰囲気を演出することです。
待合室では、適度な明るさと間接照明やデザイン照明を組み合わせ、くつろぎやすい空間を作ります。
バックヤードやカラーラボでは、作業の効率化が図れる照度と、スイッチの位置や照度、色温度にも配慮して設計を行います。
レイアウトの最適化
スタッフの作業効率を考慮し、シャンプーエリアやカットエリア、待合室などの動線に注意して配置します。
クライアントが滞りなく移動でき、スタッフが無駄な動きを最小限に抑えられるように工夫をしますが、その際クライアントの各ブースの滞在時間についても配慮が必要です。
施術スペースは、クライアント同士のプライバシーや居心地を考慮し、接触ができるだけ少なく感じるレイアウトにすることも大切です。
清潔感の維持
施主様からのご要望が1番多いのは、やはり清潔感の維持です。
美容室は髪の毛をカットしたり、髪の毛を染めたりする所ですから、必然的にゴミが出ますし、薬品の飛び散りが起こります。
そこで設計段階で配慮できることは沢山ありますが、特にコストがかからず、効果的なものを選定します。
髪の毛の目詰まりを防ぐため、表面の凹凸が少なく、薬品の染色スピードが比較的長く、少し染色してしまっても見えにくい床材を選定し、継続的な清掃のしやすさを考慮。
シャンプーエリアの壁面も要注意です。
薬品や水の飛び散りは少なくないため、拭き取りのできるビニールクロスを推奨します。
また、使い捨てアイテムの収納スペースを確保し、清潔な印象を維持することも効果的です。
空調と通気性
快適な室温や湿度を維持するために、湿度調整機能のある空調システムを取り入れると天候や店舗の特徴にも柔軟に対応ができます。
同時に、新鮮な空気を循環させるための通気口や換気扇の適切な配置をすることも大切です。
施術スペースには少なくてもエリアごとに1つの換気扇。スタッフルームには、薬品を使用する場所のほぼ真上へ1つ配置するのが効果的です。
その際のダクトの配管は、他室へ匂い戻りが無いよう特にトイレの換気ダクトには注意しましょう。
機能的な収納
施術に使用する機材や製品を使いやすく、かつ見栄え良く収納することを心がけましょう。
同時に、美容師が素早く必要なアイテムにアクセスできるように配置します。
たかが収納。されど収納です。デザインにも目を向け機能的でおしゃれな唯一無二の収納は、クライアントの目に留まりやすく、印象深いものとなります。
デザインとブランディング
ブランドのイメージを反映させたイメージカラーやデザイン要素を空間に組み込み、美容室の個性を強調しましょう。
ロゴや看板なども取り入れてブランドの認知度を高めることも重要ですが、その際、商用となる為、著作権や肖像権などの権利についてはよく調査し、検討します。
美容室の設計において、これらの懸念点や注意点に配慮し、より居心地の良い空間づくりを目指しましょう。ただ髪を整える場所を超えた、特別な体験の場が創り出されます。クライアントがリラックスし、美容師が創造性を発揮できる環境が、美とくつろぎを同時に提供することとなります。美容室の設計は、ただの空間ではなく、個性のある特別な場所を作りましょう。